Chickens
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はじまり


From

COM INSTITUTE TOKYO

& MOKKA VIENNA
comes the one and only world-wide patented
CHICKENS SUIT®.

 

 

自由の1着

 

「誰も必要としないけれど誰もが欲しがる、そんなちょっと面白い。」ChickensSuit®のウェブサイトが提供するものは、それ以上でも以下でもない。全世界が、このオーストリアと日本の合弁事業によって完成した製品を分かち合い、楽しむべきだ。ChickensSuit®は今後、昔なじみの家禽用に新しいタイプの服を開発する。今後、様々なサイズの製品を供給するのはもちろんのこと、日墺両国の国旗の色にインスピレーションを得た赤白のツートーン・カラーの組み合わせを、多様にデザインを変えて発売する。温かいニット製品や、2種類の偽装用バージョン(カムフラージュとヘア・ファー)も提供する予定だ。最初のコレクションが2005年日本の愛知県名古屋市近郊の田舎びた環境で開催される万博で、ついに発表される。オーストリア・パビリオンのステージの上を、ChickensSuit®に身を包んだ20羽の名古屋コーチンが闊歩する。名古屋コーチンというのは、名古屋周辺の地域でのみ飼育されるニワトリで、日本では高貴で体が大きく頑健なニワトリの種類として特に高い評価を受けており、好んで賞味されもする。ニワトリのモデルだけでなく、このファッション・ショーでは映画も見ることができる。その中では、オーストリアのニワトリ、アーニー君がグロリエッテであるとか楽友協会の黄金のホールであるとかいったウィーンの中でもとりわけ印象深い場所で、さまざまなスーツをその都度それにふさわしい機会に着ている。ヴィルヘルム・マーリンガーとの協働でこのファッション革命を演出するエドガー・ホーネットシュレーガーは、映画のためのサウンドトラックの選択においてさえ、ファッション・ショーそのものと同様、非情なほどに徹底している。全世界の人々にChickensSuit®を買おうという気を起こさせたいのなら、それはもう当然、モーツァルトの曲で決まりだ。

アイロニーをもって、このアーティストは一歩一歩、ディテールにこだわりながら自らのプロジェクトである進歩的な進歩計画を処理し、世界中から観客が集まるこのような博覧会の産業文化としての製品展示会の下ごしらえを進める。そして、日本における万博に際して、進歩という喜ばしきメッセージを同じようにアイロニックに提示したオーストリア出身のアーティストは、ホーネットシュレーガー以前にも存在した。大阪における EXPO 70の中心テーマは、「人類の進歩と調和」であった。示されるべきものは、より大きな人生の喜び、より良き自然資源の活用、より摩擦の少ない共生、そしてより効率的な生の組織化のための改善案であった。1922年ウィーンで生まれ、1938年にロサンジェルスに移民したルディ・ゲルンライヒが招待され、日本でその革命的なユニセックス・プロジェクトを実現することとなった。一人の男性と一人の女性の頭がつるつるに剃られ、体全体の体毛も取り除かれた。この二人組みはそれぞれ全く同一の服を着てショーに登場した。両者がビキニであるとか、ミニスカートにトップレスであるとかいった姿で現れた。涼しい季節のために、このデザイナーはニットのオーバーオールを用意していたが、その襟はタートルネックになっていて、巻き戻すと鼻を隠すほどの高さになった。必要なら、ヴィダル・サスーンのヘア・ヘルメットで寒さを防ぎ、カラー・コンタクト・レンズで有害な環境の影響から身を守ることができた。時間機能のついた幅の広いカフス「タイム・ピース」が、これらの両性具有的存在をお望みの時間体系に接続した。この挑発的なメッセージが受けもして、世界のマスコミが即座にこの話題を採り上げた。たとえば、ドイツの『シュテルン』はある専門家の発言を報道したのだが、彼は人類の絶滅をさえ危惧していた。その理由は、このように表現された人間は、お互いに対してもはや性的な関心をまったく持てなくなるだろうから、というのだ。このアイロニカルではあるが大真面目なプロジェクトにおいて、ゲルンライヒは、ひとつの文化の中で何が男性的または女性的と了解されているのかを明らかにしたかったのだ。

エドガー・ホーネットシュレーガーの世界市民は、もはやジェンダーの境界を越える両性具有人間ではなく、日本とオーストリアの国旗という国民シンボルを付与されたオーダーメード・スーツを着たり、あるいはChickensSuit®のグローバルな宣伝キャンペーンに今にも乗り出さんと迷彩服を着るニワトリである。「Nature’s Wisdom」によって、未来の地球社会は方向を定めるべきであるというのが、少なくともエキスポ2005のモットーの示す見解だ。過ぎ去った20世紀に、世界は根本的に変容した。科学と技術における急速な進歩は、人・モノ・情報が絶えまなく交換される状態をもたらした。ところで、この万博は、地球上に生息するあらゆる生き物の持続的で調和の取れた共生のための前提条件として、さまざまな文化と文明が平和的に共生するためのグローバルな展望を生み出そうとしている。「Grand Intercultural Symphony」へと呼びかけられている。さまざまな声のポリフォニックな共鳴へと。――「すばらしい織物を世界のために織り成すために」。したがって、中心部のパヴィリオンのひとつに展示されるマンモスの印象深い牙がそのような世界観のイコンと化するとしても、なにも驚くにはあたらない。技術の歴史ではなく地球の歴史が、現在および未来のさまざまなシナリオのための思想の宝庫となる。これらのシナリオもまた技術無しではやっていけないことを、インプットされた業務を万博会場のいたるところで遂行する奴隷ロボットたちが証明している。しかしエキスポ 2005はまた、調和に満ちたグローバル社会の福祉に奉仕する自然利用のための技術という牧歌を、信ずるに足るパノラマと経験世界の中に理解し、現実に似たある接写のようなやり方で明確な像として捉えることが、それほどたやすくはないことをも示している。したがって、家事ロボットと機械仕掛けの孫は自分達の生活を、世界のさまざまな風景と国際的に有名な名所を背景として繰り広げるのであり、またエキスポ05の使命宣言の中に言われ、さまざまな国々の展示にも表れているように、「人類が所有する美のオブジェ」を背景として繰り広げるのである。しかし、ここにパノラマのように繰り広げられるこの世界は、全ての人に開放されていて全ての人に奉仕する世界ではなく、明らかになるのは、結局のところ、立ち入り制限をともなう区分された消費の提供である。エドガー・ホーネットシュレーガーとヴィルヘルム・マーリンガーは彼らのChickensSuit®によって、国際社会などと思われているものが、実は消費する者だけが勝利するタフな世界市場にすぎないことを暴露する。結局のところ、このアーティストは本物の「piece of freedom」を無料で宅配することを約束しているのだ。

 

ブリギッテ・フェルデラー